東京地方裁判所 昭和34年(行モ)33号 決定 1960年4月06日
申立人 中央労働委員会
被申立人 神奈川県知事
主文
被申立人は申立人が中労委昭和三十二年不再第三六号不当労働行為再審査申立事件につき昭和三十四年三月十八日附でなした命令のうち、杉山巖が昭和三十年十二月十九日(第一次解雇の日)から昭和三十三年十一月十二日(予備的解雇の日)に至るまでの間に支給を受けるはずであつた諸給与相当額を支払う限度において、右命令に従わなければならない。
(裁判官 桑原正憲 駒田駿太郎 石田穰一)
【参考資料】
緊急命令申立書
申立の趣旨
右申立人を被告とし、国を原告とする御庁昭和三四年(行)第五九号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決が確定するまで、被申立人は、杉山巌に対する昭和三十年十二月十九日付解雇を取消し、同人を解雇当時と同等の職務と待遇の保障される職に復職させ、かつ解雇の日から復職に至る間に同人が受けるはずであつた諸給与相当額を同人に支給せよ。
との決定を求める。
申立の理由
一、杉山巌は、もと国に雇用されていたいわゆる駐留軍間接雇用労務者であるが、昭和三十年十二月十九日付で保安上の理由に基き解雇された。
二、これに対し、全駐留軍労働組合相模支部は、右解雇は労組法第七条第一号に違反する不当労働行為なりとして、昭和三十一年十月三日神奈川地労委に救済申立をなしたところ、同地労委は、保安上の理由による解雇と認むるの他はなく、不当労働行為とは認められないとして、昭和三十二年十一月二十七日付で、申立を棄却した。
申立人全駐留軍労働組合相模支部は、右命令を不服として、昭和三十二年十二月十六日申立人中央労働委員会に再審査の申立をなした。
申立人委員会は、審問の結果、初審命令を取消し、「再審査被申立人は、杉山巌に対する昭和三十年十二月十九日付解雇を取消し、同人を解雇当時と同等の職務と待遇の保障される職に復職させ、かつ解雇の日から復職に至る間に同人が受けるはずであつた諸給与相当額を同人に支払わなければならない」旨の命令を昭和三十四年三月十八日付で発した。
三、右救済命令に対し、国は昭和三十四年四月三十日右救済命令の取消を求める旨の行政訴訟を提起し、右事件は、御庁昭和三四年(行)第五九号事件として目下係属中である。
四、もし、この訴訟の解決するまで申立人委員会の発した前記命令の内容が実現されないならば、右の救済をうけた労働者及びその家族の生活は甚しく窮乏し恢復すべからざる損害を蒙ることは明らかであり、ひいては労働組合法の立法精神は没却されるに至ることになるので、昭和三十四年七月一日の申立人委員会第三百四十五回公益委員会議において労働組合法第二十七条第七項の規定による申立をなすことを決議した。
よつてここに本申立に及んだ次第である。